賃貸借契約における原状回復とは
原状回復とは賃貸借契約書をご確認いただくと、必ず書かれている言葉です。
貸主と借主の原状回復についての解釈、考え方が違うので退去の際にトラブルになります。
原状回復とは貸主がよく誤解されているような、借りたときの状態にして貸主に返すことではなく、借主の故意・過失による減耗・毀損やその他通常の使用を超えるような使用による減耗・毀損を復旧することです。
自然的な時間の経過に伴って生じる減耗(経年変化)や賃借人の通常の使用により生じる程度の減耗(通常減耗)は賃貸人が負担すべきで賃借人が負担する原状回復義務には含まれません。
これは毎月支払っている賃料には時間の経過に伴って生じる減耗や通常の使用により生じる程度の減耗は当然に含まれているからです。
それなのに退去の際にまた借主が負担してしまったら貸主が二重に得をしてしまいます。
また、仮に借主の故意・過失により毀損や減耗してしまったとしても賃貸期間による減価償却を考慮して、借主が負担すべき金額(原状回復費用)を計算することになります。
貸主負担と借主負担
貸主(大家さん)負担
建物・設備等の自然的な劣化・減耗等(経年変化)及び賃借人の通常の使用により生ずる減耗等(通常減耗)については、賃貸人が負担すべき費用となります。
経年変化 | 通常減耗 |
時間の経過に伴って生じる減耗 | 通常の使用に伴って生じる程度の減耗 |
借主(入居者)負担
賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用方法を超えるような使用による減耗等については、賃借人が負担すべき費用となる。
床(フローリング・クッションフロア・畳・カーペットなど)の補修費用の相場
床の種類 | 補修内容 | 補修費用の相場 |
フローリング | 新規に張替え(既存の床材をはがして新しいフローリングを張ります) | 30,000円~60,000円/1畳
100,000円~180,000円/6畳 150,000円~230,000円/10畳 無垢のフローリングの方が1割から2割高いです。 |
フローリング | 重ね張り(既存の床材の上に新しいフローリングを重ねる) | 20,000円~50,000円/1畳
80,000円~160,000円/6畳 130,000円~21000円/10畳 無垢のフローリングの方が1割から2割高いです。 |
クッションフロア | 新規に張替え(既存の床材をはがして新しいクッションフロアを張ります) | 30,000円~80,000円/6畳
50,000円~110,000円/10畳 |
クッションフロア | 重ね張り(既存の床材の上に新しいクッションフロアを重ねる) | 25,000円~60,000円/6畳
40,000円~100,000円/10畳 |
畳 | 新調 | 10,000円~20,000円/1畳
60,000円~100,000円/6畳 |
床(フローリング・クッションフロア・畳・カーペットなど)のよくある質問
Q:リビングのカーペットにタバコの焦げ跡をつけてしまい色調の都合ですべての部屋のカーペットの張替え費用を敷金から差し引くと言っていますが、払うべきですか?
A:賃借人が責任を負うべき補修工事の範囲はタバコの焦げ跡をつけてしまったリビングルームのみになります。
Q:畳に家具の跡がついているので取替費用を負担してほしいと言われましたが、払うべきですか?
A:通常の使用による損傷と考えられますので負担の義務はありません。
賃貸人・賃借人の修繕分担表
床(フローリング・クッションフロア・畳・カーペットなど)
賃貸人の負担になるもの | 賃借人の負担になるもの |
1.畳の裏返し、表替え(特に破損していないが、次の入居者確保のために行うもの)
(理由) |
1.飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ(こぼした後の手入れ不足等で生じた場合)
(理由) |
2.フローリングのワックスがけ (理由) |
2.冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床に汚損等の損害を与えた場合)
(理由) |
3.家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
(理由) |
3.引越し作業で生じたひっかきキズ
(理由) |
4.フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)
(理由) |
4.フローリングの色落ち(借主の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)
(理由) |
5.畳の変色(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)
(理由) |
7.落書き等の故意による毀損
(理由) |
床(フローリング・クッションフロア・畳・カーペットなど)の耐用年数
床の耐用年数が6年のもの
・畳床
・カーペット
・クッションフロア
経過年数を考慮しないもの
・畳表
・フローリング(ただし床全体を張り替えた場合には経過年数を考慮して負担割合を算定する)