敷金・退去原状回復 網入りガラスの熱割れ・錆割れの責任 ③

賃貸の網入りガラスの熱割れ・錆入れの責任 火災保険は使える?  建具・柱の借主が負担する原状回復

網入りガラスとは

網入りガラスはアパートやマンションなどの集合住宅で比較的よく使用されているガラスでガラスの中に金属(ワイヤー)が入っています。

なぜ金属のワイヤーが入っているかというと、網入りガラスは地震や火災が起こった際にガラスが飛散することを防いでくれるので延焼を抑えることができるからです。

網入りガラスのメリットとデメリット

網入りガラスはガラスが飛散することを防いでくれるメリットがありますが、反面金属の網が内部に入っているので熱を吸収しやすく他のガラスに比べ熱割れが起きやすいガラスになります。

網入りガラスの熱割れ

網入りガラスの熱割れとは、ガラスの温度差によってガラスが膨張してしまい割れてしまうことです。

耐熱ではないガラスのコップに熱湯を注いでしまうと温度差によってガラスのコップが割れてしまうことと同じ原理です。

熱割れの原因の例

・ガラスの大きさ
ガラスのサイズが大きくなると膨張量が大きくなり発生する応力が大きくなるので熱割れが起きやすくなります。

・カーテンやブラインド
ガラスのそばにカーテンやブラインドがあるとカーテンやブラインドからの反射によってガラスが吸収する熱量が増えるとともにガラスとカーテンやブラインドとの間に熱がこもりやすくなり熱割れが起きやすくなります。

冷暖房器具
冷暖房器具からの風が直接ガラスにあたるとガラスの室内外の温度差が大きくなりやすく熱割れが起きやすくなります。

・シールや遮熱フィルム
シールや遮熱フィルムを貼ると貼った部分の吸収率が上がり、ガラスの温度が上がりやすくなるので熱割れが起きやすくなります。

・木や電柱や室外機等の影
ガラスの面に影がかかると影になっている部分の温度は低くなり温度差がでやすいので影がない場合と比較してで熱割れが起きやすくなります。

網入りガラスの錆割れ

網入りガラスの錆割れとは、ガラス内部のワイヤーが錆びることによって膨張してしまい割れてしまうことです。

熱割れや錆割れによるガラスの負担は貸主負担?

ガラスエッジの加工処理の問題と熱膨張率の差から自然に発生した網入りガラスの亀裂は国土交通省の原状回復を巡るトラブルとガイドラインの記載では借主の過失がなくガラスが割れているので貸主が負担することになっています。

熱割れに火災保険は使えるの?

ガラスの熱割れは契約で定められている条件を満たしている場合には火災保険や家財保険が使用できます。

ただし修理費用が免責金額(事故が起きた際にご自身で負担しなければならない負担額)を下回っている場合には補償を受けることができません。

熱割れの見分け方

熱割れの場合には温度の低いガラスの端のサッシの方からガラスの中心に向かって1本から3本ぐらいの亀裂が入ります。

ガラスに物をぶつけたりして衝撃で割れた場合には衝突場所を中心に蜘蛛の巣みたいに放射線状に亀裂が入ります。

建具・柱のよくある質問

Q:ペットが柱や壁に傷を損傷してしまった損害を請求されたのですが?

A:ペットが柱や壁を傷つけてしまった場合は借主負担となります。

Q:地震によって家具等が転倒してしまい柱や壁を損傷してしまったのですが?

A:家具等の設置方法に問題があった場合を除き借主の落ち度はないものと考えられますので地震などの自然損害による損傷は貸主負担になるものと思われます。

賃貸人・賃借人の修繕分担表
(網戸・ガラス・落書き・柱)

賃貸人の負担になるもの 賃借人の負担になるもの
1.網戸の張替え(特に破損していないが、次の入居者確保のために行うもの)

(理由)
入居者の入れ替わりによる物件の管理上の問題であり貸主が負担する。

1.飼育ペットによる柱等へのキズ、臭い(ペットによって柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合)

(理由)
ペットの飼育はいまだ一般的とはいえず、ペットのしつけや尿の後始末が原因で柱やクロスにキズや臭いが付着した場合は借主負担。ペット飼育禁止の賃貸物件でペットを飼育した場合は用法違反にあたる。

 

2.地震や台風などの自然災害で破損したガラス

(理由)
自然災害によって破損しているので物件の維持管理上の問題であり借主に責任はありません。

2.落書き等の故意による破損

(理由)
落書き等で故意に破損させているので借主の善管注意義務違反に該当する。

 

3.網入りガラスの毀損
(構造により自然に生したもの)
(理由)
熱割れで亀裂が自然に発生した場合には借主に責任はありません。

賃借人の原状回復義務負担一覧表
(網戸・ガラス・落書き・柱)

賃借人が負担すべき修繕の単位 経過年数による負担
建具
(ふすま)
 1枚単位

 

ふすま紙・障子紙

消耗品としての性格が強いので経過年数は考慮しない。

建具
(柱)
 1本単位 ふすま・障子等の建具部分や柱

経過年数は考慮しないが、考慮する場合は建物の耐用年数に応じて残存価額1円となるよう、負担割合を算定する。

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